【税理士監修】フリーランスとして働くことには、どのようなリスクがある?リスクの管理・回避(ヘッジ)する方法とは?
2023年07月25日
※こちらの記事は長谷工コミュニティが運営するビステーションのプロモーションを含みます。
フリーランスとして独立し、時間や場所において、自由な働き方を実現したいと言う方は少なくありません。しかし、一方で、フリーランスとして働く場合、会社員などと違って、法的な保護が少なくリスクもあります。そこでこの記事では、フリーランスとして働く場合の具体的なリスクを紹介し、また、そのリスクの具体的な管理・回避(ヘッジ)方法をご紹介します。
フリーランスとは?言葉の定義とは?
フリーランスは、独立して、仕事を請け負う人のことを指します。法令上、明確な定義はありませんが、政府が策定した「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」による定義では、「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者を指す」と定義づけられています。
上記の政府が策定したガイドラインでの定義や検討会では、雇用と似た働き方をしている方、事業体としては、やや不安定な状態の方をフリーランスと定義している印象です。自分自身で店舗を持ちアルバイトを雇用するような自営業者や、完全に独立して事業を営む個人事業主とは、やや区別して、ガイドラインを策定することにより保護しています。
参考:フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン
政府の「雇用類似の働き方に関する検討会」で論点となったフリーランスの主たる9つのリスクとは?
平成29年「働き方改革実行計画」において、雇用類似の働き方に関する保護等の在り方について、有識者会議で法的保護の必要性を含めて中長期的に検討することが決まり、法律、経済学等の有識者からなる検討会が、平成30年から令和2年まで議論されてきました。
この検討会において、特に問題視されたリスクは次のとおりです。
・不利な契約条件になる可能性(条件の不明示、契約内容の変更・ 終了ルール等)
・就業条件が不利になってしまう可能性
・報酬額が不適正になってしまう可能性
・仕事が打ち切られてしまう可能性
・仕事が原因で負傷し又は疾病にかかってしまうリスクがある
・社会保障が不十分なリスク
・出産、育児、介護等との両立が難しくなるリスク
・スキルアップ・キャリアアップの機会が少ないリスク
・発注者からのセクシュアルハラスメント等の被害に遭うリスク
参考:雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会ウェブサイト
フリーランスは、雇用された状態と似た状況で働いているにもかかわらず、契約条件や報酬額が曖昧であり、仕事が打ち切られてしまうリスクや、個人や家庭のいたしかたない事情によるリスクを抱えたまま、スキルアップやキャリアアップの機会を得られていない可能性があると懸念されています。
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フリーランスが抱えやすいリスクの詳細・具体例
次に、フリーランスが抱えやすいリスクを、より詳細・具体的に考えてみましょう。
フリーランスが抱えやすい事業場のリスクとは?
・収入の不安定性および年収の上昇の難しさ
フリーランスは、プロジェクトの獲得や契約の不確実性により、収入が不安定になる可能性があります。また、単価や報酬の交渉が難しく、年収を上げることが困難な場合があります。
・営業活動の必要性
フリーランスは自ら営業活動を行う必要があります。クライアント獲得のため、営業やマーケティング、ネットワーキングなどを自ら進めていく必要があります。
・景気の悪化による影響を受けやすい
フリーランスは経済の変動や景気の悪化により影響を受けやすく、需要の減少やプロジェクトのキャンセルが発生する可能性があります。
・取引先とのトラブルへの対応の必要性/損害賠償請求される可能性
フリーランスは自ら取引先とのトラブルに対処する必要があります。クライアントとのコミュニケーションや契約上の問題に対応するスキルが求められます。また、ミスや不備によってクライアントや第三者に損害を与えた場合、損害賠償を請求される可能性があります。(個人事業主は株式会社の代表取締役などと違い、法律上、無限責任を負うこととなります。)
・高齢時のスキル不足による仕事減少リスク
フリーランスの場合、高齢になった際に需要や技術の変化に対応する必要があります。スキルや知識のアップデートが必要であり、それに対応できない場合、仕事が減少する可能性があります。
フリーランスが抱えやすい業務上のリスク
・雑務が多くなりがち
フリーランスは自身のビジネスを運営するために、営業活動やマーケティング、契約管理、請求書の作成、顧客サポートなどの雑務を自己負担でこなす必要があります。
・自己管理の必要性
フリーランスは自分自身のスケジュール管理やタスク管理、労働時間の調整など、自己管理能力が求められます。効果的な時間管理やワークライフバランスの維持が重要です。
・スキルアップの機会の限定
フリーランスは継続的なスキルアップを図るための研修やトレーニングの機会が限られている場合があります。自ら学ぶ必要があり、外部の研修などを活用し、スキルアップに取り組む必要があります。
また、日々の収入獲得のための稼働をしながら学ぶ時間を確保する必要があるという点にも、留意が必要です。
・マネジメント機会の制約
フリーランスは通常、自身のビジネスのマネジメントやリーダーシップの機会が限定されています。プロジェクトの範囲内でのチームマネジメントやプロジェクトリーダーの役割を果たす機会が制約されることがあります。
・税務申告の必要性
フリーランスは自身の所得に関する税務申告や税金の支払いを自己責任で行う必要があります。正確な記録の保持や税務知識の習得が重要です。
フリーランスが抱えやすい生活上のリスク
・社会的信用の低さ
フリーランスは、一般的に社会的信用が低いと見られる場合があります。銀行や金融機関との取引や住宅ローンなどの借り入れにおいて、信用を得るのが困難なことがあります。
・税金のケアの必要性
フリーランスは自己責任で税金の申告と支払いを行う必要があります。住民税の支払いなどを失念していると、急に大きな金額の支払いが必要になるケースがあります。
さらに、度重なる税金の支払い遅れがあると、信用面でも傷が付いてしまうリスクがあります。
・ワークライフバランスの取りづらさ
フリーランスは仕事とプライベートの境界が曖昧になりがちで、ワークライフバランスを取りづらい場合があります。仕事に追われることや休暇や休日の取得が難しいといった課題が生じる可能性があります。
・加入できる保険や保証の制限
フリーランスは雇用主によって提供される従業員の福利厚生や社会保険に加入できない場合があります。健康保険や労災保険などの制度の制限を受ける場合や、保険や保証の範囲が限られる可能性があります。
フリーランスが抱えるリスクを管理・回避(ヘッジ)する具体的な方法
フリーランスが抱えやすい事業上のリスクの管理・回避(ヘッジ)方法
・収入の不安定性および年収の上昇の難しさ
・営業活動の必要性
・景気の悪化による影響を受けやすい
上記の課題には、営業・マーケティング活動を日常的に実施する方法が考えられます。
自らの顧客は、どこにいるのか?を検討し、リストを作成して営業活動を行いましょう。
複数の取引先を持ち、ポートフォリオを組んでおくと良いでしょう。
・取引先とのトラブルへの対応の必要性/損害賠償請求される可能性
上記の課題には、弁護士と顧問契約を締結しておくという解決方法が考えられます。契約書を締結することはもちろん、締結前に契約書は必ず弁護士に確認してもらい、法的トラブルになりえるリスクについて事前に把握し、ヘッジできるようにしておくと良いでしょう。
フリーランスが抱えやすい業務上のリスクの管理・回避(ヘッジ)方法
・雑務が多くなりがち
・自己管理の必要性
上記の課題には、スケジュール管理やタスク管理に優れたツールやアプリケーションを活用することで、自己管理能力を強化することや、あまりにも雑務が多い場合には、一部の仕事をアウトソーシングするという方法が考えられます。
・スキルアップの機会の限定
・マネジメント機会の制約
上記の課題には、書籍や外部のセミナー・研修などを活用して、スキルアップの機会を増やすことが重要です。関連するトレーニングやセミナーに参加し、業界の最新のトレンドや技術をアップデートしましょう。
マネジメントについても、外部のセミナー・研修を活用しつつ、自らが関わっているプロジェクトなどで、クライアントに相談のうえ、リーダーシップを発揮できる機会を積極的に取りに行くとよいでしょう。
・税務申告の必要性
上記の課題には、自分自身で、管理ツールなどを活用し把握する方法と、税理士の先生にアドバイスを受けることや、顧問契約を締結し委任してしまう方法などが考えられます。
また、2023年10月から始まる、インボイス制度への対応も考えておかなければいけないことを考えると、税理士の先生にアドバイスを求めておいた方が良いでしょう。
リスクは、事前に把握していれば、ある程度管理することができ、回避(ヘッジ)策も講じることができますので、どのようなリスクがありえるのかを確認し、回避策を検討しておくと良いでしょう。
また、リスクとして最も大きな収入面のリスクについては、独立後も、いざとなった際には、企業で勤務できるようにしておくとよいでしょう。そのためには、日頃から自分の専門性を磨きスキルアップをし、実績を積んでおくと良いでしょう。
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フリーランスが抱えやすいリスクから考えるフリーランスに向かない人の5つの特長
次の5つに該当する方は、フリーランスという働き方は、あまり向かない可能性があります。
1.営業が苦手
2.自己管理が苦手
3.事務作業・雑務が苦手
4.安定を求める
5.健康上/メンタル上の不安がある人
営業が苦手な場合、最も大きなリスクである収入の確保が難しい可能性があります。また、自己管理・事務作業が苦手な場合、回避(ヘッジ)する方法を構築できない場合、仕事を失ってしまう可能性があります。
安定性を求める場合は、そもそも独立は、やや不向きです。
健康やメンタルに不安がある方は、突発的なトラブルなどが発生する可能性を考えるとフリーランスには向かない可能性もあります。
フリーランスが抱えやすいリスクに対する政府の対応は?
政府は、内閣官房を中心に、公正取引委員会、経済産業省、中小企業庁、厚生労働省で検討を行い、令和5年2月24日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)を成立させ、令和5年5月12日に公布しました。されました。
これにより、発注事業者は、個人で働くフリーランスに業務委託を行う際に、業務委託をした際の取引条件の明示、給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払、ハラスメント対策のための体制整備等が義務付けられました。
これにあわせる形で、厚生労働省ウェブサイトにおいて、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を公表しています。
法制度が整備されたことにより、今後、フリーランスのリスクは、減少していく可能性があります。
参考:フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン
フリーランスとして働くリスクと、リスクの管理・回避(ヘッジ)方法のまとめ
本記事では、主にフリーランスのリスクとリスクの管理・回避(ヘッジ)方法についてまとめてまいりましたが、フリーランスとして勤務することで、時間や、場所に縛られない働き方の実現や、営業・マーケティングを上手にまわせば収入をあげることも可能となります。
リスクを回避するための対策は個々の業種や状況によって異なる場合がありますが、重要なのは、自身の状況を正確に把握し、リスク要因を事前に認識し対策を講じることです。フリーランスとして活躍するためには、リスクを適切に管理し、メリットを最大限に活かすことが重要です。
この記事を掲載している長谷工コミュニティが運営するシェアオフィス、ビステーションでは、レンタルオフィス、コワーキングオフィス、バーチャルオフィスを展開しており、フリーランスとして活躍している方にもご利用いただいております。
ぜひ、ご活用くださいませ。
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この記事の監修者
峯クラウド会計事務所 代表税理士 峯 英之
キャッシュフローコーチ・融資コンサルタント
会計事務所と税理士法人で8年間の実務経験。税理士法人では、中小企業の税務サポート、上場会社の連結納税支援、信用金庫の相続税相談員などを担当。 キャッシュフローコーチ・融資コンサルタントとして創業期の経営者の資金調達や、キャッシュフロー改善サポートなども行う。
税法の中では、特に法人税務に強く、代表的な例としては、税法に無いスキームを構築し実行し約21,000,000円の節税に成功したケースや、税務調査で約33,000,000円の納税額を減らしたケースなどがある。
個人事業主と一人会社のサポートに特化し、マイクロ法人設立や副業法人設立に力を入れている。
この記事の執筆者
unite株式会社代表取締役 角田 行紀
起業支援、事業支援や、最適な士業の無償紹介、士業が講師を務める企業研修事業(主に法務・労務・税務・財務)、経営者や士業などが講師を務めるセミナー事業などを行うunite株式会社代表取締役。
多くの起業家からの相談や、士業による起業希望者へのアドバイス、自身の起業経験などを基に本稿を執筆。