【弁理士監修】個人事業主も登記ができる⁉商号登記の必要性やメリットデメリット、商標はとらないと危ない?

2023年06月08日

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※こちらの記事は長谷工コミュニティが運営するビステーションのプロモーションを含みます。

登記は、法人しかできないと思っている方も多いですが、実は、個人事業主も登記をすることができます。
この記事では、個人事業主が登記をする方法とメリット、登記しないことのデメリットと、併せて確認しておきたい商標登録について解説します。

個人事業主でも、登記(商号登記)はできる

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個人事業主でも、登記はできます。この場合の登記は、「商号登記」を指します。
商号とは、個人事業主や会社などが、営業・サービスを提供(商売)するときに使う正式名称のことを指します。具体的には、「居酒屋○○」、「○○コンサルティング」「○○教室」といったものです。
似た言葉で、より一般的なものに、屋号がありますが、屋号は、個人事業主が自分の商売・サービスを識別してもらうためにつけるものです。(開業届に書くことが一般的です。)
従って、個人事業主が行う登記とは、屋号を、商号として登記することが一般的です。

法人登記は、株式会社や、合同会社など、法人格がある場合、必ず必要になるもので、その商号や名称、所在地などを公示するための制度です。個人事業主の場合、法人登記は必要なく、また法人でないため、法人登記はすることができません。

多少の費用はかかりますが、個人事業主が商号登記をすることで社会的信用力が増すと考えられますので、できれば、しておいた方がいいでしょう。※その他のメリットは後述します。

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個人事業主は、商号登記しなくても大丈夫?

商号登記をしないことによる罰則は、ありません。従って、極論、商号登記をしなくても大丈夫ですし、商号登記をしない個人事業主の方も多くいらっしゃいます。

個人事業主が商号登記をする必要性は?メリットはある?

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個人事業主は、商号登記をすることについて、法的な義務などはありません。先ほど、説明したとおり、極論、商号登記をしなくても大丈夫です。

ただし、個人事業主が商号登記をすることによるメリットもあります。
具体的には以下の2点です。
・法的な裏付けができ、社会的な信頼を高められること
・将来法人化する際に、同一の名称などを使える可能性が高くなる

商号は、同一商号・同一本店は禁止されています。(商業登記法第27条)従って、商号は早い者勝ち的な側面があるため、誰かに真似をされてしまうと、使えなくなってしまうことになるため、商号登記はしておいた方が良いといえるでしょう。

同様の観点から、併せて商標についても確認しておきましょう。

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個人事業主が商号登記と併せて確認しておきたい商標登録

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早いもの勝ちという観点から、併せて確認しておきたいのは商標登録です。
商標登録も早いもの勝ちという側面があり、それは先に、そのネーミングなどを使用していたかどうかではなく、先に出願していたか否かが判断基準になります。

「わが国では、同一又は類似の商標の出願があった場合、その商標を先に使用していたか否かにかかわらず、先に出願した者に登録を認める先願主義という考え方を採用しています。」┃特許庁ウェブサイト

従って、商標を出願していない場合、時間と手間をかけて育ててきた自社のブランドを、他社や他人にとられてしまう可能性があるということです。先に出願された場合、もちろん裁判をされると負けてしまいますし、場合によっては差止請求をされてしまうケースもあります。

こうなると、会社名やサービス名など変えなければならない可能性もあり、ウェブサイトや名刺、商品パッケージの変更など、実損害も高額になりがちです。

従って特に、以下のような場合は、商標の出願も併せて検討しておくとよいでしょう。
・屋号や商号をサービス名として利用している場合
・屋号や商号が、自社のサービスを連想させる場合
・他人や他社に、似た名称を使われたくない場合

なお、商号に関しては、同一商号・同一本店の制限と場所的な射程は比較的短いものでしたが、商標に関しては、より広い範囲、すなわち日本国内での使用が制限されたり、類似する商標の使用が制限されたりしますので、この点もよく理解しておくと良いでしょう。

個人事業主が、商号登記をする場合にかかる費用は?経費計上できる?

個人事業主が商号登記をする場合に必要な費用は、3万円(登録免許税)です。その他に、もしも専門家などに依頼する場合は専門家の費用が別途必要になります。
ただ、手続きとしては、そんなに難しいものではありません。

・印鑑(個人の実印)
・屋号印/商号印
・印鑑届出書
・商号登記申請書
など、必要なものを持参し、法務局へ行って手続きをすればOKです。

必要な書類は、事業所の最寄りの法務局へ確認しておきましょう。

法務局┃管轄のご案内

オンラインでの申請の場合┃法務省ウェブサイト

また、登記にかかる費用は経費計上が可能です。

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個人事業主が、商標登録をする場合にかかる費用は?経費計上できる?

商号の登記には、あまり大きなお金はかかりませんが、商標登録には、ある程度お金がかかります。
また、自分でやり切ることが難しいケースもあるため、弁理士に相談・依頼することが一般的です。
特に、出願をして拒絶された場合の拒絶理由通知への対応が難しい可能性があります。
なお、先行調査は、特許庁のウェブサイトにリンクがある「j-platpat」で確認することができます。

商標を取得するのに必要なステップと費用は大きくわけると、以下のとおりです。
➀先行商標調査:2万円前後(1商標1区分:20,000円前後)
②出願(特許庁法定費用:3,400円+(区分数×8,600円)+弁理士費用:6.7万円前後)
➂拒絶理由通知への対応(弁理士費用8.9万円前後)
➃登録料の納付
 (5年間保護を受ける場合:17,200円×区分数)
 (10年間の保護を受ける場合に:32,900円×区分数)
 (弁理士費用:1区分4.5万円前後)

弁理士費用については、日本弁理士会アンケート結果の平均値を記載

また、商標登録についても経費計上することが可能です。

まとめ

いかがでしたでしょうか?個人事業主も登記(商号登記)ができることと、登記しておくと良いことを中心に解説しました。
ただ、一方で、自社のブランドやネーミングも守るという意味では、併せて商標登録もしておくと良いということも解説させていただきました。
とても良い名称を思いついたけれど、他社が使ってしまっていた。先に使っていたのに真似をされたうえに、差止請求をされ、自社が名称を変えなければならず、大きな損害が発生したというケースは、実際に発生している問題です。

営業と拡販(攻撃)をしながらも、必要なところは防御(法的な保護や法律遵守)をバランスよく行っていくと良いでしょう。

この記事の監修者

あしたば国際特許事務所 弁理士 石川真一

質の高いサービスの提供をモットーとし、発明者との打ち合わせによる発明発掘手法などにより、知財をサポートしている。 社会人になってから、東京電機大学工学部第二部機械工学科を卒業しており、機械工学についての専門知識を有する。また、三菱化学生命科学研究所出身のため、バイオ案件の取り扱い実績も多数。

機械/化学/バイオ/生活用品の特許、実用新案、意匠、商標に注力。 2003年から知財を守る業務につき、2007年に弁理士登録。(2023年現在)約20年ほどの業務実績があり、多くの大企業、中小企業や個人のサポート実績や、知財セミナーなどの実績多数。 知財に関する知識不足から発生する多くの失敗事例を見てきたため、知財の重要性を広める活動にも従事。

この記事の執筆者

unite株式会社代表取締役 角田 行紀

起業支援、事業支援や、最適な士業の無償紹介、士業が講師を務める企業研修事業(主に法務・労務・税務・財務)、経営者や士業などが講師を務めるセミナー事業などを行うunite株式会社代表取締役。
多くの起業家からの相談や、士業による起業希望者へのアドバイス、自身の起業経験などを基に本稿を執筆。

https://www.unitenco.com/